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村上春樹 街とその不確かな壁 中文翻譯講解
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きみがぼくにその街(まち)を教(おし)えてくれた。
是你告訴我有關那個城鎮的事的。
その夏(なつ)の夕方(ゆうがた)、 ぼくらは甘(あま)い草(くさ)の匂(にお)いを嗅(か)ぎながら、川(かわ)を上流(じょうりゅう)へと遡(さかのぼ)っていった。流砂止(りゅうさど)めの小(ちい)さな滝(たき)を何度(なんど)か越(こ)え、時折(ときおり)立(た)ち止(と)まって、 溜(た)まりを泳(およ)ぐ細(ほそ)い銀色(ぎんいろ)の魚(さかな)たちを眺(なが)めた。二人(ふたり)ともしばらく前(まえ)から裸足(はだし)になっていた。澄(す)んだ水(みず)がひやりと踝(くるぶし)を洗(あら)い、川底(かわぞこ)の細(こま)かい砂地(すなち)が二人(ふたり)の足(あし)を包(つつ)んだ夢(ゆめ)の中(なか)の柔(やわ)らかな雲(くも)のように。ぼくは十七歳(とななさい)で、 きみはひとつ年下(としした)だった。
那個夏天的傍晚,我們一邊聞著帶有香甜氣息的野草味,一邊往河流的上游步行而進。我們穿越了幾個流沙淤積而成的小瀑布,而且偶爾還會駐足而立,觀賞著在水灘中游泳的細銀色的魚兒。我們兩個從剛剛就已經打赤腳走著,清澈的河水冰涼地沖洗著我們的腳踝,河底的細沙包裹著我們的腳恰似那夢中柔軟的雲朵一樣。當時的我十七歲,而你比我小了那麼一歲。
きみは黄色(きいろ)いビニールのショルダーバツグに、 低(ひく)いヒールの赤(あか)いサンダルを無造作(むぞうさ)に突(つ)っ込(こ)み、砂州(さす)から砂州(さす)へとぼくの少(すこ)し前(まえ)を歩(ある)き続(つづ)けていた。濡(ぬ)れたふくらはぎに濡(ぬ)れた草(くさ)の葉(は)が張(は)り付(つ)き、緑色(みどりいろ)の素敵(すてき)な句読点(くとうてん)となっていた。ぼくはくたびれた白(しろ)いスニーカーを両手(りょうて)に提(さ)げていた。
你把紅色低跟涼鞋隨意地塞進黃色塑膠背包裡,然後走在我的正前方,從這個沙洲到另外一個沙洲持續地走著。已經濕掉的草沾黏在你被河水沾濕的小腿上,我從後面看去彷若那美麗的標點符號,而我則用雙手拎著我那雙破舊的白色運動鞋。
きみは歩(ある)き疲(つか)れたように無造作(むぞうさ)に夏草(なつくさ)の中(なか)に腰(こし)を下(お)ろし、 何(なに)も言(い)わず空(そら)を見上(みあ)げる。小(ちい)さな鳥(とり)が二羽並(にわなら)んで上空(じょうくう)を素速(すばや)く横切(よこぎ)り、鋭(するど)い声(こえ)で啼(な)く。沈黙(ちんもく)の中(なか)で青(あお)い夕闇(ゆうやみ)の前触(まえぶ)れが二人(ふたり)を包(つつ)み始(はじ)める。きみの隣(となり)に腰(こし)を下(お)ろすと、なんだか不思議(ふしぎ)な気持(きも)ちになる。まるで数千本(すうせんぼん)の目(め)に見(み)えない糸(いと)が、きみの身体(しんたい)とぼくの心(こころ)を細(こま)かく結(むす)び合(あ)わせているみたいだ。きみの瞼(まぶた)の一瞬(いっしゅん)の動(うご)きや、唇(くちびる)の微(かす)かな震(ふる)えさえもが、ぼくの心(こころ)を揺(ゆ)さぶる。
也許是走累了吧,你隨意地坐在夏天的草地上,不發一語地仰望著天空。兩隻小鳥一起迅速地掠過了天際,還發出了尖銳的叫聲,在我倆沉默不語當中,泛著深藍色的黃昏的預兆開始包圍我們。當我在你的身旁坐下時,不知怎麼的,一種奇妙的感覺頓時湧上了心頭,彷彿數千根看不見的細線把你的身體和我的心緊密地連結在一起。就算是你的眼皮的一瞬間的動作,或者嘴唇微微的顫動,都會撼動我的心靈。
そんな時刻(じこく)には、きみにもぼくにも名前(なまえ)はない。十七歳(じゅうななさい)と十六歳(じゅうろくさい)の夏(なつ)の夕暮(ゆうぐ)れ、 川(かわ)べりの草(くさ)の上(うえ)の色鮮(いろあざ)やかな想(おも)い——あるのはただそれだけだ。もうすぐぼくらの頭上(ずじょう)には少(すこ)しずつ星(ほし)が瞬(またた)き始(はじ)めるだろうが、星(ほし)にも名前(なまえ)はない。名前(なまえ)を持(も)たない世界(せかい)の川(かわ)べりの草(くさ)の上(うえ)に、ぼくらは並(なら)んで腰(こし)を下(お)ろしている。
在那當下,你跟我都沒有名字,只有十七歲和十六歲的夏天的黃昏,還有在河邊的草地上色彩繽紛的心情—僅僅是這樣而已。即將,在我們的頭上的星星就要閃閃發亮,但就連那星星也沒有名字。在這個沒有名字的世界的草地上,我們就這樣肩並肩地坐著。
「街(まち)は高(たか)い壁(かべ)にまわりを囲(かこ)まれているの」ときみは語(かた)り出(だ)す。沈黙(ちんもく)の奥(おく)から言葉(ことば)を見(み)つけだしてくる。身(み)ひとつで深海(しんかい)に潜(もぐ)って真珠(しんじゅ)を採(と)る人(ひと)のように。「それほど広(ひろ)い街(まち)じゃない。でもすべてを簡単(かんたん)に目(め)にできるほど狭(せま)くもない」
その街(まち)のことをきみが口(くち)にしたのは二度目(にどめ)だ。そのようにして街(まち)はまわりを囲(かこ)む高(たか)い壁(かべ)を持(も)った。
「那個城市四周都被高牆包圍著」,你終於開口說話了。從沉默不語的深處尋覓出了一句話,就像隻身一人潛入深海採珍珠的人一樣。「這個城市並不大,但也不至於狹窄到可以一望而盡。」
這是你第二次提到這個城市。就如同她說的那樣,這個城市擁有著包圍四周的高牆。
きみが語(かた)り続(つづ)けるにつれて、街(まち)は一本(いっぽん)の美(うつく)しい川(かわ)と三(みっ)つの石造(いしづく)りの橋(はし)(東橋(ひがしばし)・旧橋(きゅうはし)・西橋(にしはし))を持(も)ち、図書館(としょかん)と望楼(ぼうろう)を持(も)ち、見捨(みす)てられた鋳物工場(いものこうじょう)と質素(しっそ)な共同住宅(きょうどうじゅうたく)を持(も)つ。夏(なつ)の夕暮(ゆうぐ)れ近(ちか)くの淡(あわ)い光(ひかり)の中(なか)で、ぼくときみは肩(かた)を寄(よ)せ合(あ)うようにして、その街(まち)を眺(なが)めている。あるときには遥(はる)か遠(とお)くの丘(おか)の上(うえ)から目(め)を細(ほそ)めて、またあるときには手(て)を触(ふ)れることができるくらい近(ちか)くから大(おお)きく目(め)を見開(みひら)いて。
隨著你不斷的訴說當中我可以知道,這個城市擁有一條美麗的河流,三座石造的橋樑(東橋、舊橋、西橋),還有圖書館和觀景台,還有被遺棄的鑄造工廠和樸素的集合式住宅。在夏日傍晚的淡淡光線中,你和我雙肩相鄰地望著那個城市。有時候我們會站在遠處的山丘上眯著眼睛眺望著,有時候又會站在幾乎可以用手觸摸到的距離瞪大眼睛看著。
「本当(ほんとう)のわたしが生(い)きて暮(く)らしているのは、高(たか)い壁(かべ)に囲(かこ)まれたその街(まち)の中(なか)なの」ときみは言(い)う。
「じゃあ、今(いま)ぼくの前(まえ)にいるきみは、本当(ほんとう)のきみじやないんだ」、当然(とうぜん)ながらぼくはそう尋(たず)ねる。
「ええ、今(いま)ここにいるわたしは、本当(ほんとう)のわたしじゃない。その身代(みか)わりに過(す)ぎないの。ただの移(うつ)ろう影(かげ)のようなもの」
「真正的我其實是生活在被高牆包圍的城市裡。」你這麼說道。
「那麼,原來現在站在我面前的你,並不是真正的你啊!」我自然地問道。
「是的,現在在這裡的我不是真正的我,其實只不過是個替身而已。只是一個像飄忽不定的影子而已。」